
公演の計画を立て、進めていく
私は東京フィルハーモニー交響楽団の一員として、楽団の公演を成功させるための計画を立て、それを進めていく仕事をしています。具体的には、話し合いをしながら公演の内容を決めていく、公演の会場や日程を決める、練習のスケジュールを調整する、そして公演が開催されるまでの様々な変更や要望に対応するという仕事です。私たちの楽団は約160人もの楽員が所属する大きな楽団ですので、オーケストラの公演、オペラやバレエでの演奏を合わせて、1年間で360回以上もの公演を行っています。
調整、調整。
公演を開くことが決まると、依頼主の様々な要望を聞いた上で、まずは公演の会場と日程を決めます。それから、オーケストラの練習日程を決めます。練習に必要な時間は公演の内容によって異なるのですが、1日4~6時間の練習を1~3日間です。これらの日程は、公演の1年も前から決めておくことが多いんですよ。目的にあった曲目を具体的に決めて、指揮者やソリスト(1人で演奏する人)を決めます。チケット販売やチラシ制作などは他に担当者がいるので、お互いの状況を確認しながら協力します。演奏会が近づく頃には、全体の進行表を作ります。この進行表はとても詳しい分単位の進行表。これを見れば本番の舞台の具体的な動きが想像できるくらいです。しかし、この進行表は当日まで少しずつ変更が加えられます。より良い公演にするために、いろいろな人から、いろいろな要望が出てくるので、その要望を実現できるように、公演の直前まで調整を続けることが私の仕事です。
話し合うことでイメージを理解する
「会社の50周年を記念するコンサートを開催したい」「外国との友好関係を記念するコンサートを開催したい」など、様々な依頼があります。依頼を受けて行うコンサートでは、依頼主が思い描いているコンサートのイメージをしっかりと理解することが大切です。例えば、「楽しいコンサートをお願いします」と言われた時にも、しっかりと話し合って初めて、どういう「楽しい」をイメージされているのかが分かります。さらに、どの曲を選ぶか、どういった順番で演奏するかを具体的に話し合っていくことで、依頼主が思い描いているコンサートが具体的な形になっていきます。始めははっきりしなかった形がどんどん具体的になり、最後に、私たちが考えた内容が依頼主のイメージにピタっ!とはまった時は「やった!」という気持ちですね。
「聴いてみたい、見てみたい」を形に
依頼を受けて行うコンサートだけではなく、私たちが企画して行うコンサートもあります。私が自分たちの公演の企画を考える時には「自分もこういうのを聴いてみたい、見てみたい」という気持ちを大切にすることを心がけています。昔は、公演の内容にはある程度決まった構成があったのですが、最近は、ある作曲家の曲をたくさん演奏する構成にしたり、序曲という種類の曲ばかりにしたり、人気の曲を並べてみるなど、いろいろな選択肢があります。曲目だけではなくて、「楽器に触れてみよう」というイベントや、音楽をより理解する・楽しむための「プチ授業」というイベントも行っているんですよ。
公演の成功を感じる瞬間
私は舞台で演奏はしていませんが、音を届ける、聴いてもらう環境を作る仕事をしていますので、その日の演奏を行っている一員だと思っています。私は、公演を聴きに来てくださった方が帰る様子をなるべくロビーで見るようにしているのですが、演奏が素晴らしかったという理由で、曲を口ずさみながら帰られる様子を見かけたときには、演奏者と同じように嬉しい気持ちになります。自分が選んだ曲について「良かった」という声が聞こえた時も嬉しいですし、「あのCDを買おうかしら」という会話が聞こえたときも、この公演に関わった全ての人たちの気持ちが一つになったようで、本当に嬉しいですね。
リコーダーがうまく吹けるとスタンプがもらえる
小学校5年生の音楽の授業で、リコーダーで間違わずに曲の最後まで吹けるとスタンプを押してもらえる、というのがあって、最初は全然うまく吹けなかったのですが、ある日突然うまく吹けるようになったんです。何かコツがわかったのかもしれませんが、とにかくそれでスタンプがもらえるようになって、教科書にスタンプがたくさん並んだんです。それでリコーダーを吹くのが楽しくなりました。中学校からは吹奏楽部に入ってトランペットを吹いていました。そして、大学3年生の時、知り合いに誘われて楽器を運んだりするアルバイトを始めたのがきっかけで、プロの吹奏楽団体に所属して働くことになったのです。その最初の仕事では、なんと小学校5年生の時の音楽の先生と再会もしました!それをきっかけに今も手紙のやりとりをしているんですよ。
「静かな子だね」
子どもの頃は、おとなしくて、あまり話さない方でした。私の両親が礼儀作法などに厳しかったので、騒がずに黙っていないといけないと思っていのかもしれません。だから、いつも「静かな子だね」と言われていました。
興味を持ったらすぐに行動しよう!
学校から演奏を依頼されることもあるので、学校に訪問して前で話をする機会が時々あるのですが、その時には私は必ず「興味を持ったら、突き進もう」と話しています。例えば、演奏に使われていた楽器が面白いと思ったら、すぐに先生や演奏している人のところへ行って、いろいろと聞いてみる。つまり、何か行動をすぐに起こしてみるということです。子どもの頃は、人生は長いから後でいいか、と思う人もいると思うのですが、人生は一度だけなのです。そのチャンスは、人生において1回しかないのかもしれません。1つ1つのチャンスを活かして、やりたいと思ったことをまずやってみる。そして、夢中になるものを見つけて、今すぐできることから取り組んでほしいと思います。
取材・原稿作成:あしたね取材チーム